隣のブルーバード

第1章 沙希24歳、冬

 冬の日暮れは早い。
 日が落ちて、風がひときわ冷たくなった。
 わたしはコートの襟を立てて、足早に駅へと急ぐ。

 2階の改札につながる階段の壁面には、地元の飲食店や公共施設のポスターが所狭しと並んでいる。

 そのなかに他のありふれたデザインとはテイストが明らかに違う、ひときわ目を惹く一枚があった。
 文化センターの改装記念に作られたもの。
 もう半年もここに貼られている。
 そして、これを見るといつも、ずきんと胸が疼く。

 このポスターをデザインした人を、わたしは知っている。
 バイト先の『田所生花店』の一人息子で、高校の先輩だった、田所優さんの婚約者。
 ふたりが出会ったきっかけはまさに、このポスターの仕事だった。
 
 何度かその人を見かけたことがある。 
 同性のわたしでさえ、思わず見とれてしまうほどの優雅な身のこなしの、たおやかな女性。
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