隣のブルーバード
そういえば、試合前に選手のみんなに渡すマスコットを一緒に作りながら、そんな話をしたことがあったっけ。

「はい。子どものころからの夢で」
「へえ、そうなんだ。でも、花屋、大変だよ。朝、早いし。肉体労働だし。冬は手が凍えそうになって、母親なんて、万年あかぎれだし」

「そんな夢壊すようなこと、言っちゃかわいそうじゃん」
と、佐川先輩。

「しょうがねえよ。本当のことだし。でも……」
 スグ先輩はわたしに優しい眼差しを向けた。

「でも、安井なら、大丈夫じゃない? めちゃくちゃ、頑張り屋さんだもんな」
「えっ」
「いっつも、部活に一番に来て、みんなのための準備を怠らないし」
「そ、それは、それがマネージャーの仕事だからで」
「だって、こいつなんかしょっちゅう遅れてくるじゃん」
 と、スグ先輩は佐川先輩を横目でにらむ。

「うるさい。いろいろ忙しいの。わたしは」

「ちゃんと感謝しろよ。なかなかいないぞ。こんないい後輩」
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