隣のブルーバード
 運命のいたずらとでもいうのだろうか。

 美貌と才能を兼ねそなえた、あんなに素敵な女性がよりによってスグ先輩と出会ってしまうなんて。
 勝ち目がなさ過ぎて、笑えてくるほどだ。

 そう。わたしは高1の夏からずっと、スグ先輩に片思いしてきた。
 9年、思い続けてきた初恋の人だった。

 ついさっき、店を出る直前、彼が店に飛び込んできた。
 そして、「安井、これ」と言って、一通の封筒を手渡した。
 
 どこからどう見ても、結婚式の招待状だ……
 
「まさか、こんなに早く結婚することになるとは思ってなかったんだけどさ。その、いわゆる“できちゃった”ってやつで……」
 照れくさそうに、でも、鼻の下を思い切り伸ばして、先輩はそう告げた。
 
「スグ先輩、おめでとう。良かったですね」
「サンキュ」
 世界中の幸せを集めたような笑顔で、彼はそう答えた。
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