隣のブルーバード

第3章 沙希23歳、春

 高校を卒業してから5年目の、風が心地よい4月下旬の夕方。
 N駅に併設されている書店で、求人雑誌の立ち読みをしているときだった。

 スグ先輩に再会したのは。


「あれ、安井……さんだよね」
 えっ? 

 ずいぶん長い時間が経っていたのに、声だけですぐピンときた。

「スグ先輩?」
「あー、良かった。別人だったら、超恥ずいとこだったよ」

 振り返ると、背広姿が板について、すっかり社会人らしくなったスグ先輩が微笑んでいた。

 でも話しかたや仕草はもちろん、高校生のときのまま。
 月日が高速で逆戻りしたようで、軽いめまいを覚えた。

 それでも、さすがに前とは違い、ドギマギせずに、きちんと受け答えすることはできた。

「わあ、本当、お久しぶりです。先輩、東京からこっちに戻られたんですか?」

「ああ、今、市役所に勤めてる。しがない地方公務員だよ。安井は?」

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