隣のブルーバード
 こんなとき、隣に裕生がいてくれれば良かったのに。
 裕生は一浪して薬科大学に入学し、今、4年生。
 家を出て、大学の近くに下宿していた。

 まあ、いたとしても、まともに話を聞いてくれはしなかっただろうけど。
 

 翌々日、わたしは先輩に『バイトの件、お願いします』とメールを送った。

***

 花屋の仕事は想像以上にハードだった。
 大切な商品である花を最適な状態に保つためにすべきことは山ほどあった。

 数時間おきの水換え。苗の枯れ葉の間引き。温度管理。
 それ以外にも、仏花の花束作りなどなど。
 
 でも、子どもの頃からの憧れの仕事をしている楽しさが、そうした苦労よりだんぜん上回っていた。
「今日はもう上がっていいわよ」
「はーい」

スグ先輩のお母さん、幸恵さんは、さすが、長年お店を切り盛りされてきただけあって、シャキシャキっとした感じの、とてもしっかりした女性だ。

 でも、笑顔の優しさは、先輩そっくり。
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