隣のブルーバード
 でも、それからすぐ、その期待が淡い、儚い夢でしかないと、思い知らされるときが訪れた。

 スグ先輩が仕事の関係で、東京のデザイン事務所に勤める佐久間杏子さんに出会い、恋に堕ちたから。

 文化センターでふたりが話している様子を一目見たとき、あっ、スグ先輩、この人が好きなんだ、とすぐにわかってしまった。

 だてに長年片思いをしてきたわけじゃない。
 って、そんなことで威張っても虚しいだけだけど。

 ぜったいに間違いないと確信したのは、先輩が薔薇園でもらった花で、幸恵さんにプリザーブド・フラワーを作ってもらった、と知ったときだった。

 あの薔薇園の管理人さんは、ここの花たちは来場した人みんなが鑑賞するものだからと、絶対、わけてくれない。

 先輩、どれだけ頼み込んだんだろう。
 相手が困り果ててしまうほど、粘っている姿が目に浮かぶ。

 管理人さん、根負けしちゃったんだろうな。
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