隣のブルーバード
「今、バイトしてるお店の店長からの紹介。花卉(かき)業者の息子さんなんだって。そこに写真がおいてあるでしょう」

 裕生は封筒には見向きもせず、不機嫌な声ででわたしに問いかけた。

「で、するのかよ」

「うーん。お母さんは会うだけあってみればいいんじゃないって」

「おばさんの意見じゃなくて、おまえはどうなんだよ」

「正直、迷ってる」

 裕生はわたしまで聞こえてくるほどの、大きなため息をついた。

「それって、早すぎじゃねえか」
「何が?」

 缶を取り出し、冷蔵庫の扉を閉めながら、わたしは尋ねた。

「沙希は長いこと、あの、田所とかいう奴に惚れてたんだろ。振られたからって、そんなあっさり次の男に行けんのかよ」

 容赦なく、痛いところをついてくる。

「裕生、何、怒ってんの? だって仕方ないじゃない」

「仕方ないじゃねえだろ!」
 裕生の声はさらに大きくなった。
< 34 / 68 >

この作品をシェア

pagetop