隣のブルーバード
「裕生……昨日のことだけど」

 少しのためらいの後、裕生の声がした。
「ん?」

「えっと……いつから、わたしを好きでいてくれたの?」

裕生は答えた。
「たぶん、はじめて会った日から。でも、はっきり意識したのは沙希からあいつが好きだって聞いた日……かな」
「そっか」

 わたしたち、あまりにも長く、一緒にいすぎたんだろう。

 本当に空気のような存在だった。
 わたしにとっての裕生は。

 不可欠な存在だったのに、その大事さに気づかずにいて、無神経に彼を傷つけ続けていたんだ。

 気が遠くなるほど、長い間。

「正直に言うとね、まだよくわかんないんだ。自分の気持ち」

「そう……だよな」

「でも、裕生の気持ちはきちんと受け止めたいと思ってる」
「沙希」

「少しだけ、時間をくれる? ちゃんと考えて答えを出すから」
「ああ」
「時間がかかってもいい?」

 少し間があく。

「いいよ。もう充分すぎるほど待ったしな。いまさらどうってことない」

 少し笑いを含んだ声で裕生は言った。
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