隣のブルーバード
「スグ先輩、佐川先輩と、付き合うんだって……」
そう言って、悲しげに肩を震わせる沙希を、どれだけ抱きしめてやりたかったか。
そんな奴、忘れろ。
おまえには俺がいる。
どれだけそう言いたかったか。
でも、わかりすぎるほどわかっていた。
彼女にとって、俺はただの幼なじみだと。
ただでさえ、振られて傷ついている沙希に想いをぶつけて、困らせたくなかった。
長年、築いてきた信頼関係を壊したくなかった。
それに、振られたくないという、変なプライドもあった。
つまり、どうしようもなく臆病だったってこと。
それでも、東京の大学に行く前日。
一度だけ沙希の気持ちを確かめたことがあった。
――まだあいつが好きなのかって。
沙希はちょっと困った顔をして、それから目を伏せて呟いた。
「うん、自分でも呆れちゃうけど」と。
俺が一度も見たことのない、大人びた表情を浮かべて。
そう言って、悲しげに肩を震わせる沙希を、どれだけ抱きしめてやりたかったか。
そんな奴、忘れろ。
おまえには俺がいる。
どれだけそう言いたかったか。
でも、わかりすぎるほどわかっていた。
彼女にとって、俺はただの幼なじみだと。
ただでさえ、振られて傷ついている沙希に想いをぶつけて、困らせたくなかった。
長年、築いてきた信頼関係を壊したくなかった。
それに、振られたくないという、変なプライドもあった。
つまり、どうしようもなく臆病だったってこと。
それでも、東京の大学に行く前日。
一度だけ沙希の気持ちを確かめたことがあった。
――まだあいつが好きなのかって。
沙希はちょっと困った顔をして、それから目を伏せて呟いた。
「うん、自分でも呆れちゃうけど」と。
俺が一度も見たことのない、大人びた表情を浮かべて。