隣のブルーバード

***

 ひと月ほど前、ブーケを作らせてほしいと提案したとき、スグ先輩はとても喜んでくれた。
 
「ぜひ、お願いするよ。ここだけの話、お袋が作るより断然いいからさ、安井のアレンジのほうが」

 彼はイタズラっ子のような目をした。
 
「それにしてもあのとき、本屋で思い切って声をかけて、本当に良かった。安井は花屋の仕事が好きなんだな。いつ見てもイキイキしてる。そうだ。次の就職先は決まった?」

「はい。3日前に。全国展開しているフラワーショップ・チェーンの店長候補に決まりました」
「へぇ、すごいじゃん。頑張れよ」

「先輩のおかげです。わたしのほうこそ、このお店で働かせていただいて、本当に感謝してます。将来はお店を持ちたいっていう夢もできましたし」

「そっか。じゃあ、そのときは知らせてくれよな。開店祝い持ってくから」

「いや、それは気が早すぎですよ、先輩」
< 50 / 68 >

この作品をシェア

pagetop