隣のブルーバード
「でも、おかげで、わたしにとって本当に大切な人が誰なのか、気づくことができました」

 杏子さんがテーブル越しにわたしの手をそっと握る。
 わたしはその上に自分の手を重ねた。

「だから今は、おふたりに感謝しているぐらいで」

「そう。よかった……」

 小さな声でそう言った杏子さんの目が潤んだように見えた。

***

 二次会にも誘われていたけれど、その日は行くところがあると言って、お断りした。
 
 今日は2月14日だから。


 これまでも、何度も裕生のところに行こうと思っていた。
 けれど、気持ちがなかなか定まらなかった。


 ただ、ひとつだけ、はっきりわかっていることがあった。

 わたしが裕生の気持ちを受け入れられないと伝えたら、彼との関係はそこで終わり。

 長年培ってきた、幼なじみとしての関係も経つということだと。
 

 本当にそんなことをしていいの?
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