隣のブルーバード
 裕生は眼鏡ごしに横目でわたしを見た。
 ちょっとあきれたような表情で。

「そんなに好きだったんなら、襲いかかるなり、なんなりして、早いとこモノにしときゃ良かったのに」

 ……襲いかかるって

「無理だって」

 わたしは生ビールのジョッキを煽った。
 アルコールが喉から胃に到達したとたん、かっと身体が火照る。

「だって、スグ先輩の理想とはまったくかけ離れているからさ、わたしは。彼の好みはスレンダーな美女。わたしみたいなチビはお呼びじゃないから……」

「チビじゃねえだろ、別に」
 
「そう言ってくれるのは裕生だけだよ。でも、152cmしかないもん。それなのに体重は52キロもあるんだよ」
 
 ほら、この二の腕触ってみてよ、とわたしは右腕を裕生のほうに差しだした。

 裕生はしかめ面に戻って、わたしの腕を邪険に振り払った。
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