隣のブルーバード
 ……何を隠そう、ファースト・キスなのだ、これが。
 
 もちろん、さっきみたいなキスがあることは知識として知っていたけれど、実際にされたら、あまりに生々しくて、かなりびびってしまった。
 
「嫌か?」
 と恐る恐る訊く裕生。

 そのとき、やかんがピーっと大きな音をたてた。

「ち、違うけど。お湯、沸きそうだったから……」と言い訳しつつ、隣の部屋へ。

 わたしはお茶を入れ、ベッドに背をあずけて飲みはじめた。

 ちょっと息をつかないと、身が持たないんだけど。

 でも、裕生が肩が触れ合うほど近くに座っているから、やっぱり落ち着かない。

「沙希……」

 と呟き、わたしの手から湯呑みを奪いとると、肩を抱き寄せて、髪の毛を撫でてきた。

 でもでも、わたしとしては……
 まだ、この状況にまったく慣れることができないでいた。

 全身がソワソワして、体温が急上昇している感じがする。
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