隣のブルーバード
 わたしはそばに行って、ティッシュで裕生の柔らかいほっぺたを拭いてあげた。

「泣かないで……」
 わたしがそう言うと、お母さんまで泣きそうな顔をした。

 お母さんったら、大人なのに。

 
 そんなふうに思ったことは、いまだに昨日のことのような鮮やかな記憶。
 
 裕生のお母さんは病気で他界されたばかりだった。

 彼女の親友だった母が、たまたまうちの隣が空き家だったこともあって、裕生のお父さんに引っ越すように勧めたのだ。

 うちにも同い年の子がいるから、いくらでも裕生くんの世話、してあげるわよ、と。

 子どもだったからそれ以上詳しい事情はわからなかったけれど、とにかくそれ以来、お父さんが出張のときなどは、裕生はうちに泊まりに来た。

 今でこそ、上から見下ろされるほど背が高くなった裕生だけど、小学校の間までわたしのほうがだんぜん大きくて。

 同い年だけど、わたしは裕生のことをずっと弟のように思っていた。
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