大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
「子宝祈願も今度からしますよ」
と咲子はうっかり声に出して言ってしまった。

 まあ、跡継ぎの期待のかかる新婚夫婦なら普通に祈ることだと思うので、心を読んだとは思われないだろう。

 そう思ったが、行正は視線も合わせず、

「いや、別にいい」
と言う。

 別にいい?
 子宝祈願しなくて良いということですか?

 何故?

 心の声は聞こえてこなかったが、その顔は特に嘘をついているようには見えず、

 咲子はこのとき初めて、おや? と思った。




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