大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
「ありましたっけね? そんな話。
私、そういうところはよく読んでいないので……」
と言いながら、咲子はその雑誌を手にとった。
「先ほどのユキ子の態度からして、清六の兄弟子は清六以上の男前だろう」
すごい観察眼ですね。
やはり、あなたの方が人の心が読めるのではないですか?
と咲子は苦笑いする。
「お前がなにか問題を起こしたら、三条家の恥。
どうしても、その庭師を呼びたいというのなら、今すぐお前を斬るっ」
――何故っ?
「その方がお前も本望だろう」
今すぐ刀を抜いて、斬りかかってきそうな感じに行正は言う。
なにも本望ではありませんよっ。
何故、庭の木の枝を斬ってもらおうと思っただけで、殺されて本望なのでしょうっ。
咲子は胸にその雑誌を押し当て、とりあえず、心の臓を守ってみた。