大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
 双方の両親はすでに別室で盛り上がっていたらしく、蝋人形 行正と瓜二つの母、静女(しずめ)が、

「ふたりで暮らすのに良い家がありますの」
 などと言っている。

 どのみち、断れる感じの話ではなかったのだな、と思いながら、咲子はチラ、と行正を見たが、行正は一瞬、合った視線をすぐにそらしてしまう。

 そして、顔を背けたまま、深い溜息をついていた。

 ……この人とはやっていけそうにないなー。

 どうせ、家の格と年齢が釣り合うからというだけで決められた結婚。

 (はな)から期待なんてしてはいないけど……。

 住居の話など、細かい話まで出てきたせいか。

 娘を嫁に出す実感が出てきたらしく、父は目にうっすら涙を浮かべていた。

 その横で、弥生子は微妙な顔をしている。

 これですっきり、せいせいするわ、という顔をしながらも、何処か寂しそうだった。

 いろんな感情がない混ぜになった両親の心が流れ込んできて、自分もしんみりしてしまう。




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