大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
 

 上官行きつけの店に行くと、店主が窓際の日当たりのいい席を用意してくれた。

 行正が腰を下ろしたとき、きらびやかな奥様方の一団が奥から出てきた。

 金髪碧眼長身で整った顔の男がそのマダムたちといる。

 なんとなくそちらを見ていると、

「あら、行正」
と大きな観葉植物の陰から、母、三条静女(しずめ)が現れた。

 相変わらず、結婚するような息子がいる女には見えないが。

 息子に対しても、常に上から目線なのも相変わらずだ。

 行正が立ち上がり、静女とその友人たちに挨拶すると、上官も立ち上がり、挨拶していた。

「そうだわ、行正さん」
 ふと思い出したように、静女が言う。

「ルイスさんは、咲子さんの通っていた女学校で先生をされているのよ」

 行正は衝撃を受けた。

 この美しい異国の男が、咲子の教師っ?
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