大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
 上官夫人からいただいた抹茶だ、と行正は説明してくれたが。

 まだ咲子は警戒していた。

「食事のあと、俺が()ててやろう」

 ひっ。
 何故ですかっ?

 今まで行正さんがお抹茶点ててくれたことなんてないんですけどっ。

 そこは愛だったのだが、咲子には、まったく伝わっていなかった。

 緊迫した食事のあと、
「では、茶室に行こうか」
と行正が立ち上がる。

 わざわざ茶室にっ?

 ここで点ててもいいのではっ?

 さらに動揺しながらも、咲子は行正について、庭の数寄屋(すきや)に移動する。
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