大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
二人きりの密室!
いや、何処も密室ではないのだが。
母家から離れた空間なので、なんとなく……。
そのとき、茶釜の側に腰を下ろした行正が木の箱を手に持ち、ふと気づいたように言った。
「……入りの抹茶か」
――なに入りのっ!?
実は行正は、
『金粉入りの抹茶か』
と言ったのだが。
いろいろ考えすぎて、声まで沈んでいた行正の言葉は低すぎてよく聞きとれず、咲子の中では、
『毒入りの抹茶か』
になっていた。
よく考えたら、自分で毒を用意したのなら、毒入りの抹茶か、はおかしいのだが。
――私のようなものが、こんな素敵な行正さんの妻だとかっ。
行正さんにとっては、私は最初から邪魔者でしかなかったのではっ?
と思う咲子の中では、もう夫による毒殺決定だった。
いや、何処も密室ではないのだが。
母家から離れた空間なので、なんとなく……。
そのとき、茶釜の側に腰を下ろした行正が木の箱を手に持ち、ふと気づいたように言った。
「……入りの抹茶か」
――なに入りのっ!?
実は行正は、
『金粉入りの抹茶か』
と言ったのだが。
いろいろ考えすぎて、声まで沈んでいた行正の言葉は低すぎてよく聞きとれず、咲子の中では、
『毒入りの抹茶か』
になっていた。
よく考えたら、自分で毒を用意したのなら、毒入りの抹茶か、はおかしいのだが。
――私のようなものが、こんな素敵な行正さんの妻だとかっ。
行正さんにとっては、私は最初から邪魔者でしかなかったのではっ?
と思う咲子の中では、もう夫による毒殺決定だった。