大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
絶対、違うと思うぞとか言われてしまいましたよ。
まあ、にわかには信じ難いですよね、と咲子は思っていた。
「わたし、小さなころから人の心が読めたんですけど。
何故か、あなたの心だけ読めないんです」
そう告白してみたが、行正は冷静に言ってくる。
「いやいや、誰の心も読めてないと思うぞ。
むしろ、誰よりも読めてないと思うが……」
何故、そんなことを思った? と言う行正を寂しく見ながら咲子は言った。
「私の言うこと、信じてくださらないのですね」
「お前の言うことなら信じたいが……」
行正はそこで口ごもる。
ああ、言うのではなかったですっ。
夫なので、いつまでも黙っているのもと思い、告白してみましたが。
行正さんを困らせてしまったようです。
「すみません。
忘れてください。
行きましょう」
と咲子は、しょんぼり歩き出す。