大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
見合いの日、行正は上官とともに死んだ目で煙草を吸いながら思っていた。
『向こうから断ってくれたらよかったんだが。
親がうるさいから、俺からは断れないし。
だがまあ、伊藤家の娘だし。
上官や親の勧める娘と結婚しておいた方が間違いないだろうしな』と。
初めてこの家を見に来た日。
咲子の実家まで迎えに来てくれた行正は、運転手が開けたドアの前で、咲子に手を差し出しながら思っていた。
『親も見送りに出ているし、仕方ない。
ここはエレガントに行くか』と。