大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
「どうでもいいが。
 俺がいない間、暇だろうが、あまりウロウロしたりするなよ」

 ええっ!?
 あなたと結婚した以上、一生この家に閉じこもっておけとっ?

 自分がどんな絶望の表情を浮かべたのかわからないが。

 行正は、ちょっと困ったように眉をひそめ、
「いや、女友だちと出かけたりするのは構わない」
と付け足してきた。

「あ、そ、そうなのですか?」

「家に女性の友だちを呼ぶのも別にいい」

 女学校時代の友人たちなど呼んでもいいんじゃないのか、と提案され、文子や美世子たちの姿が頭に浮かんだ。

 ――つい、この間まで、毎日顔を合わせていたのにな。

 みんなそれぞれの道を歩き出し。
 自分も結婚の準備で忙しかったので、あまり会うこともなくなっていた。

 早速、声をかけてみよう、と思いながら、
「ありがとうございます」
と咲子は頭を下げる。

 それにしても。

 ウロウロするなよとか、厳しめのことを言うわりに、そんなに行動に制限ないような?

 私は一体、なにを禁止されたのでしょうね?
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