大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
「行正さまはまだ帰ってらっしゃらないの?」

「……帰るわけないじゃないですか」

 まだ昼間ですよ。

 っていうか、なにしに来たんですか。

 美世子さんも新婚ですよね? と思ったのだが。

 美世子の目には、心を読むまでもなく、
『行正さまの美しいお顔を拝みたい』
と書いてあった。

「で、行正さまとの新婚生活はどうなの?」
と美世子に訊かれ、少し離れたここまでいい香りを届けてくれる薔薇を眺めながら、咲子は溜息をつく。

「どうなのもなにも、すぐに捨てられそうな気がします」

 すると、美世子は喜んだ。

「そうなのっ?
 何故?

 どうしてっ?」

 ……いや、美世子さん、そんなあからさまに、と思いながらも咲子は言った。
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