大正ロマン恋物語 ~将校様とサトリな私のお試し婚~
 女学校のみんなの嫁入り先はもう決まっている。

 これ以上、相手を決めずに父親をイライラさせても仕方がない。

「結婚してからの方が自由でいいわよ。
 嫁入り前の娘がって親に厳しく言われたり、見張られたりなんてこともないしさ」
と従姉のたかちゃんも言っていたことだし。

 愛など何処にもなさそうだが。

 もらっていただけると言うのなら、もらっていただこう、この蝋人形さまに――。

 ふつつかな娘ですが、と自分で思いながら、
「よろしくお願いいたします」
と咲子は頭を下げた。


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