妖怪ホテルと加齢臭問題・その後の小話・オトナの現実と何とかの糸

施設の職員が、
窓のカーテンを、閉めていく様子が見える。
ようやく、久遠が口を開いた。

「むしろ、避けていた。
思い出してしまうから・・
封印していた。
母親の事が、あったから」
久遠が、小さなため息をついた。

「もう、10年以上、前の話だけど・・・母親は病気で・・
末期がんだった。
でも、母親は「俺には、病気の事を絶対に言うな」って
口止めを、強く親父にしていたんだ。」

久遠は、自虐的な調子で、続けた。
「俺は、そんなこと全然知らなかったから、
能天気に遊びまくっていた。
親父から電話があっても、無視してさ。
やっと、電話に出た時は、
母親が、亡くなったという知らせだった。」

しばらくの沈黙・・・
久遠は片手で、
何かの感情が、出て来るのを止めるように、口を押えた。

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