妖怪ホテルと加齢臭問題・その後の小話・オトナの現実と何とかの糸
天音は、深呼吸して言った。

「高原久遠さん、
ちゃんと、お話しをしなくては
いけませんよね」
あえて、フルネームで呼びかける。

久遠は、血統書付きのレトリバー、それも、黒のモフモフの大型のわんこだ。

久遠は、少し首をかしげて
「話って・・?
あの契約は、成立だよね」

自分は、この大型わんこの飼い主に、なるのか、なれないのか。

わんこの意向を、再確認しなくてはいけない。
ビジネスとラブアフェアを、
混同させるのはよくない。
この歳で、痛い思いはしたくない。

天音は、素早く視線をそらすと、
駐車場の植え込みの端に、
ベンチがあるのに気が付いた。
そばには、目を引く四輪駆動の
高級外車が止まっている。

久遠のものだろう。
天音は、その外車の前を通り過ぎて、ベンチに座った。
それから、久遠に座るよう、
手で促した。

久遠が隣に座ると、天音は口を
開いた。

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