青い星を君に捧げる【零】
《side.リリィ》

この裏社会には毘沙門天・弁財天・大黒天と3つの組織があり、三天という。

それぞれの組織を率いる家紋が天沢家・七扇組・本郷家で、人はそれらを御三家といつからか呼んだ。


御三家の中でも飛び抜けて権力を持つ本郷家の現当主を父に持つ私の名前は本郷リリィ。

学校に通っていれば中学3年生。つい先日15歳になった。


学校なんて通ったことの無い私は本郷家の本邸から離れた、敷地内にある百合の宮という場所に閉じ込められて育った。


関わる人は私の母親代わりである侍女の卯ノ花雅(ウノハナ ミヤビ)とそして____


「おはよう、リリィ」


私の幼なじみであり、側近の阿久津匡(アクツ キョウ)だ。この閉鎖的な空間で生きる私とって彼がもたらしてくれる話は魅力的である。


「おはよう。あれ、『明日は来れない』って言ってなかった?」


昨日の記憶を思い返しながら尋ねると、彼は困ったように顔をしかめる。庭園から縁側に座った匡に近づく。


「その事を知った当主様が、空いた側近枠に今来てた人を推薦したんだ。外で会食のある今日限りだし、俺の知り合いで信頼出来る人だから」


そう、今日は珍しく屋敷の外に出る大事な用事があるのだ。人と関わるのが嫌いな私のことを見越して頼み込む匡に、わかったからと制す。
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