青い星を君に捧げる【零】
《side.藤野佑真》

波瑠さんを本郷家の近くまで送った後、再び繁華街へと戻ってきた。自転車を適当な所に止めてスマホをいじっていればバイクの轟音が近づいてくる。


顔を上げると丁度ヘルメットを外した敦がバイクに跨っていた。


「珍しいな、お前がチャリに乗るなんて。俺以外は勘づいてないと思うが……危ないことに足を突っ込んでるじゃないよな?」


ヘルメットを俺に投げて寄こした敦は一際低い声で言う。


「まさかぁ!!ちょっと気になることがあっただけだよ」


表情を隠すようにフルフェイスのヘルメットを被ると敦の後ろに乗った。


言えるはずない。


俺は本郷家当主の命令で敵対組織の内偵をしていること。今日は逃げ出したお姫様を連れて帰るよう命じられたこと。


大事なお前らに危険な橋を渡らせる訳にはいかない。


俺が我慢すれば、それで済む。例え穢れたとしても芯だけは真っ直ぐでありたい。


ねえ、波瑠さん。


俺あなたが今日くれた言葉、本当はとっても嬉しかったんです。もしかしたらこの苦しみが報われるんじゃないかって考えられたから。


俺が今日自転車にしたのはあなたとゆっくり話してみたかったからだと言ったら、どんな反応をしてくれましたか。


あなたが、俺の秘密を共有してくれている人でよかった。俺に芽吹いたこの気持ちの先にいるのがあなたでよかった。
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