青い星を君に捧げる【零】
♢II
《side.藤野佑真》

小高い丘の階段を登れば、小さな公園があって眼下には美しい海が広がっている。ポケットを探ってスマホを構えた。


____カシャ


夢中になって何枚も撮影する。公園には先客がいたようで、後ろ姿が映り込む。その人は俺の存在に気づくと、俺が来た方とは反対側の階段を下っていった。


どうしようもなく俺はその人の後ろ姿を目に焼き付けたかった。遠くに行って姿が小さくなったその時、その人は刹那にこっちに振り返った。


_____カシャ


ちょうどシャッターが下された瞬間だった。全ての時間が止まったような、そんな感覚。二度と出逢えないであろう人が俺から去っていく。


スマホの画面に写ったその人の横顔を優しく親指でなぞる。


思い切って声をかけてみればよかったかも……ともうそこにはいない姿に後悔した。
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