青い星を君に捧げる【零】
急いでいる様子の彼を送り出し、私も身支度をし始める。


百合の宮に閉じこもってばかりの生活が長いからと言って何もせずにいた訳では無い。勉学に礼儀作法、武道などそれなりの教養はあるつもりだ。


全ては当主様に、父親に見て欲しいから。褒められたいから。その一心で励んできたのに1度たりともそんな仕草を見せることは無い。


それでも私は諦められない。


重苦しい着物に腕を通す。鏡に映る深い茶色の髪の自分が、嫌いだ。


草履を履いて玄関から1歩踏み出す。いつも通り左右には数人の真っ黒いスーツに身を包んだ護衛の男性たち。


見知った屈強そうな男性たちの最後尾に一際若く、凛々しい男性……というよりも男子と言った方が合っているような人がいた。


____ 俺の知り合いで信頼出来る人だから


一目見ただけで分かった。あの人が匡の言ってた人だと。


クリーム色の髪は太陽に照らされて輝き、伏せられ影を落とす長い睫毛に隠れた赤い瞳には強い意志が潜んでいる。


立ち止まりじっと見つめていたことを不思議に思ったのか、男の子が視線をゆっくりと上げた。


ここにいるということは当主様に認められて実力があるということ。


いいな、なんて思いながら目が会わないうちに道沿いに左右に別れる護衛たちの間を歩き出した。
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