青い星を君に捧げる【零】
「____なぜ言い返さないのですか」


「えっ?」


静かな夜に後ろから突如聞こえた声に驚いて振り向く。男の子は私を見ることなく遠くで揺れる木々を眺めている。


「母親が亡くなっていることを笑われて怒らなかったので」


ああ、彼は会食中の会話のことを言っているのかと気づいた。


「いつものことだし……どうでもいいの」


「はっ、どうでもいいってあなたにも思ってることぐらいあるでしょう」


男の子は呆れたように嗤う。それがどうしても気に食わなかった。


「私が何を言っても無駄なの!!!普通に生きてきたあなたには分からないでしょうけど!!」


勢いよく立ち上がり男の子を睨んだ。そこでようやく彼は私と目を合わせた。


最悪、嫌い、大嫌い。


何が信頼出来る人だ。匡の嘘つき。


背の高い彼の息遣いが近い。私たちは理解し合えない、真反対の人間だと痛く感じた。


「ええ、1から10まで分かりませんね。俺には伝わりません」


「あなたに言いたいことなんて1つしかない」


何です、と首を少し傾げる男の子を羨んだ朝の自分を止めたい。


「私の前に二度と現れないで」


そう言い残すと1日だけの側近の彼を置いて私はホテルの中へと戻ることにした。
< 6 / 87 >

この作品をシェア

pagetop