青い星を君に捧げる【零】
♢III 《side.藤野佑真》
忙しい両親に代わって妹の付き添いとして俺は興味もないピアノのコンサートに来ていた。途中寝つつも、パンフレットを見れば残り数人のところまで順番は回っていた。
舞台袖から青いドレスを纏った女の子が歩いてくる。うちの妹と対して年齢は変わらなそうだ。
舞台を照らすスポットライトに当たり、ブロンドの柔らかい髪が輝く。白百合の髪飾りがよく映えている。彼女はお辞儀をするために会場の方へ顔を向けた。
伏せたまつ毛が影を落とす。その奥にドレスに勝る美しい蒼の瞳が光った。
配布されていたプログラムを見ても彼女の名前は載っていない。ただ演奏する曲が記載されているのみだ。
彼女が演奏したのはドビュッシーの『月の光』だった。美しくも儚いその曲はまるで彼女を形容しているようである。
会場中が彼女の虜だった。1秒も見逃さぬように、瞬きすら惜しいほどの。
「あ……」
俺は小さく声をこぼした。髪から時折覗く彼女の横顔。それは違う列車に乗ってしまったあの日、海が見える丘で見たものと同じだった。
あれから何度、写真に写り込んだ彼女を見ただろう。俺は夢にまで見た女の子にまた会えたのだ。しかも今度は前よりも近くで。
高揚した。胸が高鳴る。
こうして俺は一方的に彼女に二度目ましてをした。
忙しい両親に代わって妹の付き添いとして俺は興味もないピアノのコンサートに来ていた。途中寝つつも、パンフレットを見れば残り数人のところまで順番は回っていた。
舞台袖から青いドレスを纏った女の子が歩いてくる。うちの妹と対して年齢は変わらなそうだ。
舞台を照らすスポットライトに当たり、ブロンドの柔らかい髪が輝く。白百合の髪飾りがよく映えている。彼女はお辞儀をするために会場の方へ顔を向けた。
伏せたまつ毛が影を落とす。その奥にドレスに勝る美しい蒼の瞳が光った。
配布されていたプログラムを見ても彼女の名前は載っていない。ただ演奏する曲が記載されているのみだ。
彼女が演奏したのはドビュッシーの『月の光』だった。美しくも儚いその曲はまるで彼女を形容しているようである。
会場中が彼女の虜だった。1秒も見逃さぬように、瞬きすら惜しいほどの。
「あ……」
俺は小さく声をこぼした。髪から時折覗く彼女の横顔。それは違う列車に乗ってしまったあの日、海が見える丘で見たものと同じだった。
あれから何度、写真に写り込んだ彼女を見ただろう。俺は夢にまで見た女の子にまた会えたのだ。しかも今度は前よりも近くで。
高揚した。胸が高鳴る。
こうして俺は一方的に彼女に二度目ましてをした。