恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 その不穏な声の響きに身体がゾクッとしたかと思ったら、彼が顔を近づけてきて私に口付けた。
 え?
 目と鼻の先に一条くんの顔。
 カッと目を見開いて驚く私の頭を掴み、彼は私の下唇を甘噛みして私の唇を濡らす。
 一体なにが起こっているのか。
 これ……キス?
 でも、この感触記憶があるような。
 頭がボーッとしてきて今はなにも考えられない。
「どう? 少しは思い出した?」
 いつの間にかキスを終わらせ、ニヤリとする一条くんを見てハッとする。
「ど、どうしてキスなんか?」
狼狽えながら問う私の頬に彼は触れてくる。
「なぜだかわからないけど、美鈴には触れたくなるんだ」
「なぜだかわからないって……」
彼の言葉に戸惑いを隠せなかった。
「もっと美鈴のことを知りたい」
「私はそんなたいした女じゃありません。早く歩連れてアパートに帰らないと」
 ベッドから出ようとしたら、一条くんに押し倒された。
「それはダメだ」
「だっていつまでも一条くんに迷惑かけられないよ」
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