恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
「そ、それは一条くんが手を当てたからです!」
 彼がやると普段ポーカーフェイスなだけに本気なのか、ふざけているのかわからない。
「冗談はさておき、ご飯にしよう」
 一条くんがベッドにお粥が乗ったトレーを置く。
「これ、一条くんが作ったの?」
 目の前にあるのは、卵がふわふわのお粥。小ねぎが散らされていてとても美味しそうだ。
「ああ」と一条くんは答えて、蓮華にお粥を救いフーフーすると、私の口に運ぶ。
「はい、あーん」
 歩が病気の時にやっていることだが、一条くんにやられるとかなり照れる。
「あの……その……私自分で食べるよ」
 蓮華を渡してもらおうと手を一条くんの前に出すが、彼は首を横に振った。
「ダメだ。いいから食べる」
 自分で食べるとこと再度断ったとしても、このやり取りを繰り返すだけ。
 休日ならまだいいが、今日は平日で彼は会社にいかなくてはならない。
 反論するのは諦めて、パクッと口にする。
 熱々で、とても優しい味がした。

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