恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
8、甘い休日
美鈴が部屋の露天風呂に入ると言ってから一時間近く経過した。
「いくらなんでも長すぎないか?」
 不安に思って、ぐっすり眠っている歩の頭を軽く撫でると、ベッドを出て浴場に向かった。
 扉を開けるとバシャバシャと水音がして、風呂の方に目をやると、美鈴が手をバタバタさせて溺れていた。
「美鈴!」
 慌てて美鈴の元に行き、彼女の身体を掴んで支えた。
 激しくむせる彼女の背中をさすり、声をかける。
「落ち着いて。もう大丈夫だよ」
 俺にしがみつきながら呼吸を整える美鈴。
 彼女が落ち着いてきたので、どうして溺れたのか理由を尋ねた。
「つ、ついうとうとしちゃって」
 まだ自分が溺れて驚いているのか、彼女は言葉に詰まりながら答える。
「上がるのが遅いから様子を見に来て正解だったよ」
 俺が気になって様子を見に来なかったらどうなっていたか。
「ご、ごめんなさい! あの……もう大丈夫だから。もう戻ってくれてい……いいよ」
 裸なのが恥ずかしいのか、美鈴が俺から離れようとする。
 
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