恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 寝ぼけ眼で歩は小さく頷き、ベッドに入る。
「絢斗……僕と美鈴のそばにずっといてね」
 歩に布団をかけてやると、その小さい手が俺の手をギュッと掴んだ。
 俺を信頼してくれていることを嬉しく思う。
「ああ。約束する。だからおやすみ」
 気休めで言ったのではない。
 美鈴が俺を望めば、ずっと一緒にいたいと心から思っている。
 歩の頭を撫でてやると、彼は安心したようにゆっくりと目を閉じた。
 それから五分ほど経って美鈴が現れたが、その顔は真っ赤で視線も泳いでいる。
「歩……ね、寝た?」
俺に尋ねる彼女の髪はまだしっとり濡れていた。
 かなり慌てたんだろうな。
 見なくても想像がつく。
「ついさっきね。美鈴、動揺しすぎ。髪まだ濡れてるじゃないか。ちゃんと乾かしておいで。また風邪を引く」
 美鈴の髪を一房掴んでチュッと口づけたら彼女の顔がますます赤くなった。
「や、やり直してきます」
 
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