恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
月を眺めてゆっくり風呂に浸かると、予備の浴衣を着て寝室に戻る。
 美鈴は目を閉じているが、時たま瞼がピクピク動く。
 狸寝入りか。
 風呂であれだけ激しく触れ合ったし、俺とどう接していいのかわからないのかもしれない。
「美鈴、おやすみ」
 彼女の額にそっと口づけると、俺も歩の隣に横になり、三人で川の字になって眠った。

 次の朝目が覚めると、美鈴が俺に抱きついて寝ていた。
 あれ、歩は?
 起き上がって歩を探そうとしたら、襖がそっと開いて彼が顔を出す。
「絢斗、美鈴が起きるまでベッドを出ないでね。僕は本読んでるから。ごゆっくり」
 かわいいというか、俺にとってはありがたいお願い。
 どこか企み顔で微笑んで、歩は襖を閉める。
 ひょっとして、昨日の露天風呂でのことを歩はしっかりと見ていて、俺に気を使っているのだろうか。
 せっかくだし、その言葉に甘えて……。
 枕に片肘をつきながらじっくり美鈴の寝顔を眺める。
 白くて、透明感があって綺麗なその顔。
< 142 / 256 >

この作品をシェア

pagetop