恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 今日、彼の帰りが遅いのは有り難い。
 心を落ち着かせる時間ができるから。
 それにしても……今朝の絢斗、なんとなく元気がなかったな。
『今日は遅くなるから寝てていい』
 いつものように私の頬に触れてそう告げた彼の目に覇気がなくて気になった。
 週末長距離を運転させてしまったから疲れが溜まってるのかな?
 私が車を運転できればよかったのだけれど、免許は持っていない。
 無理をさせてしまったなら申し訳なかったな。
 帰ってきたらマッサージでもしてあげる?
 でも、温泉宿でのこともあるし彼に自分から触れるのはなんだか恥ずかしい。
 歩が起きていれば、ふたりで絢斗をマッサージするんだけど。
 そんなことを考えていたら、あっという間に吉祥寺に着いた。
 電車を降りて店に行くと入口のドアのところで秀さんに会った。
「あっ、秀さんじゃないですか。こんな時間にいらっしゃるなんて珍しいですね」
「おや美鈴ちゃん、ちょっと老眼鏡を忘れてしまってね。取りに来たんだ」
 
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