恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました

　秀さんは老眼鏡を私に見せながらにこやかに微笑む。
「週末はいなかったけど、どこかにお出かけしていたのかい？」
「ええ。北陸の方へ行ってきました。カニが美味しかったですよ」
「ああ。カニいいねえ。私も食べたくなったよ。お肌の艶もいいし、美味しいものたくさん食べてきたんだねえ。ところで、美鈴ちゃんは恋人はいるのかな？」
　秀さんの質問に自虐的に返した。
「いたら週末ここで働いていないですよ」
「そうか。美鈴ちゃんのようないい子がうちの孫のお嫁さんになってくれたら嬉しいんだがねえ」
　思わぬ話に一瞬呆気に取られたが、笑顔で遠回しにお断りした。
「そう思ってくださるのは有り難いですけど、私結構ずぼらなんです。それに、お孫さんに恋人がいるかもしれませんよ」
「いや、あれは女嫌いでなあ」
　悩ましげに言う秀さんに差し出がましいと思ったが、優しくアドバイスする。
「だったらそっとしておくのがいいと思いますよ。周りに勧められると反発しますから」