恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
 週末旅行した時、絢斗は杉本くんのことは一切口にしなかった。
 今までにないくらい明るく見えた。
 でも、やっぱり親友の命日がくれば、悲しい気持ちにもなるに違いない。
 私も母が大好きだったわけではないけれど、母が亡くなった時はかなりショックを受けた。
 絢斗は私がピンチの時に助けてくれた。
 私は彼になにができる?
 そんなことを考えていたら、絢斗がバスローブ姿でリビングに現れた。
 疲れた表情というより、どこか生気がない顔をした彼に声をかけた。
「なにか飲む?」
「お酒って言ったら怒る?」
 酔いを覚ますためにシャワーを浴びたはずだけど……。
 お酒をもっと飲みたくなるくらい辛いのかな?
「怒らないよ。私も付き合う」
 私の言葉を聞いて彼は微かに笑った。
「お酒弱いのに?」
「今日は飲みたい気分なんです」
 ひとりで飲むなんて寂しいじゃない。
 彼を見据えて強く主張する。
「わかった」
 静かに頷いて絢斗はサイドボードからブランデーとグラスをふたつ取り出し、ソファの前にあるテーブルに置く。
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