恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
私がソファに座ると、彼はブランデーをグラスに注いだ。
「はい。美鈴は舐める程度にしておいた方がいい」
 絢斗が差し出したグラスを受け取り、一口飲んでみる。
 苦くてカーッと喉が熱くなる。
 思わず顔を顰める私を見て、彼がクスッと笑った。
「無理して飲まなくていいよ。強いお酒だから、美鈴は少し飲んだだけで酔うかもね」
「苦いけど、香りはいいね」
「そうだね」
 絢斗は自分のグラスにブランデーを注ぐと、あおるように飲み干した。
 あ~、そんな飲み方して。
 注意したいところだが、今は我慢だ。
 いつも彼は自分を律している。今日くらい飲み過ぎたっていいじゃないか。
 絢斗をじっと見ていたら、彼が空になったグラスを見つめながら衝撃的な話をした。
「杉本は……病気で亡くなったんじゃない。俺の目の前で自殺したんだ」
「う……そ。白血病で亡くなったって……」
 あまりに驚いてしまってそれ以上言葉にならなかった。
「白血病だったのは本当。杉本は闘病に耐えられず、自分の病室から飛び降りた」
「そんな……」
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