恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました

「あいつのいる病院に通うのが日課になっていて、九年前の今日も見舞いに行ったら、あいつは窓枠に腰を下ろしていて、俺の顔を見て『一条ごめん。もう俺疲れた』って笑って言って飛び降りた」
　そんな辛い死に方って……。
「毎年あいつの命日が来る度に思う。俺が早く動いていれば助けられたんじゃないかって」
　ギュッと唇を噛みしめる彼を反射的に抱きしめたが、その身体があまりにも冷たくて驚いた。
「誰がその場にいても無理だったよ、きっと。杉本くんが自分で決めたんだもん」
「何度もそう思おうとしたけど、自分を責めずにはいられない。アメリカに留学したのだって日本にいるのが辛かったからだ」
　後悔の念を口にする彼を見ていると胸が痛かった。
「自分を責めないで、絢斗」
「最後に見たあいつの顔が忘れられない」
　ずっと彼は苦しんでいたんだ。それなのにひとりで抱えて……。
「つ、辛かったね」
　絢斗の気持ちを考えたら、とても悲しくて涙が出てきた。
「どうして美鈴が泣くの？」