恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
10、天国にいる友人が俺に遺したもの
『一条、ごめんな。お前に変な十字架背負わせて』
死んだはずの杉本が俺の肩にポンと手を置く。
『杉本……』
 なぜ彼がいるのだろう。
 目の前に杉本がいることに驚いて言葉が出なかった。
 そんな俺に彼はとびきりの笑顔で告げた。
『もう俺が死んだことで苦しむな。死んだ俺より、今生きている人間を大事にしろよ。これ、俺が伝いたかった遺言だ』
 まばゆい光に包まれ、杉本は消えていく。
「待て……!」
 彼を呼び止めようとしてパッと目が開いた。
 夢……か。
 腕の中には美鈴がいてすやすや眠っている。
 昨夜、彼女と愛し合って、ずっと後悔の念に苛まれていた俺の心が軽くなったような気がした。
 美鈴が俺の心に寄り添ってくれたからかもしれない。
 今生きている人間を大事に……か。
 杉本が夢の中で言ったその言葉が俺の心に浸透していく。
 美鈴の頭を優しく撫でながら、彼女をじっと見つめた。
 彼女は初めてだった。
 大切なものを俺にくれたんだよな。
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