恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
食事を終えて席を立つと、峯岸が椅子に躓いたので咄嗟に彼女の両腕を掴んで支えた。
「危ない! 大丈夫か?」
「ごめんなさい。ちょっとヒールが高くてフラフラしちゃった。ごめんなさい。ちょっとしばらくこのままでいて」
 峯岸が急じ俺に抱きついてきてハッとした
 体勢を立て直すのかと思ったが、数秒経っても俺に抱きついたまま。
「どうした? 目眩でも?」
 峯岸に確認すると、彼女は自嘲するように笑って俺から離れる。
「ごめんなさい。ちょっと涼太を思い出しちゃって」
 なんだか見ているのも痛々しい。
 だが、昨日の俺も同じようだったかもしれない。
 いつか、峯岸も杉本とのことをいい思い出にできるといいのだが。
「あまり思い詰めるなよ」
 そう言葉をかけると、会計をして、店の前で彼女と別れた。
 会社に戻り、副社長室で決済書に目を通していたら、拓真が「ランチどうだった?」と好奇に満ちた目で俺に尋ねる。
「別に、普通」
「相手は美人じゃないのか?」

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