恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました

　パスタを見て思わず感嘆の声をあげると、彼女がククッと笑った。
「副社長夫人になったらきっと飽きるくらい食べるわよ」
「もう本当にからかうのはやめて。顔から火が出そう」
　親友を上目遣いに見て注意すると、豪華なパスタを堪能した。
　その後コーヒーを頼んで飲んでいると、奥から絢斗が歩いてきて反射的に目がいく。
　あっ！と思っていたら、彼の横にグレイベージュのパンツスーツを着たすごい美人がいて、ふたりは話をしながら私たちのテーブルの前を通り過ぎて店を後にする。
ビジネスランチだろうか。
一緒にいた女性になんだか見覚えがあるんだけど、どこで会ったんだろう。
コーヒーカップを見つめて考えていたら、咲がすぐに私が欲しかった答えを口にした。
「あれ副社長だったわね。一緒にいたのは峯岸さんよ」
峯岸さん……そうだ。杉本くんの恋人だった峯岸百合さん。
彼女は同級生だったというだけで、ほとんど話したことはないけれど、美人で勉強もスポーツもなんでもできたスーパーガールだった。女子といるより男子といる方が多かった印象だ。