恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
その日は定時に仕事を終わらせて家に帰ると、歩と志乃さんが出迎えてくれた。
「お帰りなさい」 
 ふたりの声がハモっていて思わずクスリと笑みがこぼれる。
 歩は志乃さんをおばあちゃんのように思っていてとても懐いている。
「ただいま。志乃さん、今日もありがとうございました」
 いつものように礼を言うと、彼女は歩の頭を撫でながらふふっと笑った。
「いいえ、いつもここに来て歩くんに元気をもらっていますから。やっぱり子供ってかわいいですね」
「そう言ってくださると有り難いです」
「では、また明日」
 にこりと笑って挨拶するする志乃さんを歩と見送る。
今日は早く帰れたので歩とハンバーグを作っていたら、玄関のドアが開く音がして絢斗が帰ってきた。
「今日早かったのね。その箱は?」
 歩と玄関に行って少しはにかみながら絢斗に声をかけるが、その手には二メートルくらいありそうな細長くて大きな箱があった。
「会食が先方の都合でなくなったんだ。これはクリスマスツリー。うちになかったから。後で一緒に組み立てよう」
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