恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
「美鈴、クルルも食べたいって」
 膝に乗っているクルルが物欲しそうにアイスを見ているのを見て、歩がクスリと笑う。
「はいはい、どうぞ」
 歩にもアイスを渡すと、クルルがかわいい顔でペロペロ舐めた。
 ああ、このふたりのショットもいい。
 すかさずスマホで写真を撮り、にんまりする。
 これでカレンダー作ったら売れそう。
 周囲のお客さんも絢斗をじっと見ている。
 だが、本人はそんな視線を全く気にせず、私と歩に目を向けた。
「猫たち、美鈴と歩にすごく懐いてるな」
 私と歩の足元にじゃれ付く猫たちを見て絢斗が頬を緩めた。
「ご飯あげる人をわかってるから。絢斗も猫の扱い慣れてるね」
 彼はアイスを舐めている猫を優しく撫でながら答えた。
「ああ。昔、祖父が飼っていたんだ」
「今はいないの?」
「祖母が亡くなって、祖父は老人ホームに入居を決めたから飼えなくなったんだ」
「そうなのね。絢斗のおじいさまって会長でしょう? 会社で見かけたことないんだけど、どんな人?」
< 194 / 256 >

この作品をシェア

pagetop