恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
「転ぶといけないから。それに、この方がより恋人アピールできる」
 そう言われてしまってはなにも言い返せなかった。
 一条くんは私の手を引いてこのホテルの三十七階にあるレストランに連れていく。
「予約をした一条です」
 レストランのスタッフに彼がそう伝えると、奥の個室に案内された。
 ガラス張りの窓、青い絨毯に白い壁。
 シックで落ち着いた部屋で、窓からの眺望も素敵なのだが、席に座っているセミロングの髪にシルバーグレーのワンピースを着ている女性を見てハッとした。
「絢斗さん、待ってました……!」
 一条くんの見合い相手が私を見て顔を強張らせる。
 どうやらこのお見合いに父親などの付添いはいないらしい。
 しかも、相手が一条くんを下の名前で呼んでいるということは顔見知りのようだ。
「そ、その女は誰なんです!」
 見合い相手の女性が繋がれた私と彼の手に目を向け、声を荒らげる。
 身につけている服、ネックレス、それに指輪は高級そうだし、彼の見合い相手となると相当いいところのお嬢さまだろう。
 
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