恋なんてしないと決めていたのに、冷徹御曹司に囲われ溺愛されました
気になって尋ねたら、彼は頭を振った。
「いいや。なんでもないよ。どうやら今年は私のところにもサンタが来たらしい。よいクリスマスを」
 ハハッと笑って秀さんは店を去る。
「あのおじいさんってよく来るの?」
 秀さんがいなくなると、絢斗が私に目を向けた。
「うん。うちの常連さん。絢斗知ってるの?」
「知ってるというか……。そのうちわかるよ」
 どこか意味深な言葉を返す絢斗をじっと見つめていたら、彼が私と歩の背中に手を当てて言った。
「そろそろ、行こうか。いいお店を予約してあるんだ」
 猫カフェの店の前でタクシーに乗って着いた先は、六本木にある有名ホテル。
「このビル、すごく大きくて高いね」
 タクシーを降りると、歩は都内でも屈指の五十階建てのビルを見上げる。
「ここのホテルの中にあるレストランで食事をするんだ」
 絢斗が歩の肩に手を置くと、弟は嬉しそうに笑った。
「なんだか社長さんになった気分」
「それでは、社長行きましょうか?」
 絢斗が茶目っ気たっぷりに言って歩の手を取る。
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